残念な事故が起こってしまいました。
昨晩小屋にお泊りになり、山の話をたくさんしたお客様が戻られませんでした。
山頂から下山中に滑落した模様で、先ほど山梨県警のヘリコプターで収容されました。
私も他の登山者からの情報が入ってから警察に通報し、山頂まで様子を見に行きました。
しかしどこで事故が発生したかは特定できませんでした。
以前から発信している通り、八合目から上部は滑落したらまず助からない場所があります。
ここでもう一度お伝えいたしますので、ぜひ情報の拡散をお願いします。
まずは八合目〜九合目の間。
写真上部に黒戸尾根の象徴とも言える二本剣の岩があります。
この写真を撮影した場所から少しナイフリッジ上を歩き、写真ど真ん中にある大きい岩を正面を見て右から迂回し(夏道は岩の左側ですが、今の時期は右側です)、ルンゼ上の急な雪壁を50mほど登ると傾斜が緩みます。
この場所は下山時によく事故が起こるところで、ここでの滑落はまず助かりません。
登山時は硬い雪も、下山時には南斜面ということもあり、雪が緩んでアイゼンが効きにくくなっている場合が多いです。小屋を早朝出発したとしても、ここを下降する時は雪の状態に注意が必要です。ましてや日帰りの場合は、完全に雪がグサグサになりますので、さらに注意が必要です。
夏は鎖がありますが、今の時期は完全に埋まっています。
今日もこの場所で帰ってきたお客様もいらっしゃいますし、ロープを使用して下降してるパーティーもありました。それぐらいの注意が必要です。立木を支点に懸垂下降ができますので、迷ったらロープを使用してください。ロープを持っていない場合は、この場所に入ってしまう前に、今一度自分と向き合ってください。
そしてこの写真は頂上直下ですが、足跡が見えると思います。
この場所も滑落した場合、写真左側に吸い込まれていく危険性があると感じました。
ここは赤石沢の源頭部ですので、ここでの滑落も致命的です。
山頂から下り始めて少し気が緩むところかもしれません。十分に注意してください。
山頂から眺める仙丈ヶ岳です。
まだまだ真っ白です。
同じく山頂からの北岳、鳳凰、早川尾根方面です。
まだまだ雪はたっぷりと残っています。
3月末にも小屋の下で事故があり、残念ながらこれでふた月続けて重大事故(死亡事故)が発生してしまいました。
この時期の黒戸尾根は甘くありません。
これから連休になり、皆さまにお出でいただきたい気持ちは大きいです。
しかし、このような山の状況であるということを肝に銘じ、決して安易な気持ちで登山をされないよう、心よりお願い申し上げます。
亡くなった方々のご冥福を心よりお祈り申し上げます。
七丈小屋 花谷泰広